1:ボイスポジションとは
『ボイスポジション』とは、一番声が上咽頭で共鳴するポイントのことです。
ボイスポジションは一つしか存在しません。
ボイストレーナーが生徒にもっとも共鳴する音を指し示すことで、共鳴を理論的に理解させるだけでなく身体的に理解させることが可能です。
特にボイストレーニングを始めたばかりの生徒に関しては、ボイスポジションを確定してあげることがとても重要になります。
ただボイスポジションは、生徒のスキルがレベルアップすることで変化します。
仮にF♯4がそもそものボイスポジションだったとしても、半年後にチェックしたら「発声能力が向上していてD♯4になった」というのは良くある話です。
2:ボイスポジションの見つけ方
まず男女それぞれ大体どの音で声が共鳴し易いのかを、事前にある程度知っておく必要があります。
男性の場合…C4~G4の間
女性の場合…D4~A4の間
です。
一般的に約8割は、上記の音域でボイスポジションを見つけることが出来ます。
残りの2割は、極端に声が低いなどの特殊ケースです。
特殊ケースは様々なのでボイストレーニングレッスンの中で発見してあげることが、ボイストレーナーとしてのスキルを問われる部分であります。
話を元に戻し、ボイスポジションは大体どの音域で見つけられるかを述べました。
以下は実際のボイスポジションの探り方です。
まず、楽器を用意します。
可能であれば鍵盤楽器で、しかも調律する必要のないキーボードが最良です。
キーボードを用意したら生徒に発声して貰います。
発声して貰うのは5つの母音です。
つまり『A(ア)・I(イ)・U(ウ)・E(エ)・O(オ)』です。
発声する音域は、まずはボイスポジションの可能性が高いと考えられる音域です。
単音でそれぞれの母音を発声していきます。
あとはボイストレーナーが生徒の声でどこの音をどの母音で発声している時が一番共鳴しているのか、を判定するだけです。
よくある方法としては、母音の『E(エ)』を発声する時にボイスポジションを確定し易いです。
ただSession4でも記載している通り、母音『A(ア)』の発声が基本です。
共鳴を理屈で教える際も、母音『A(ア)』の口腔内の形を説明することが基準です。
仮に母音『E(エ)』でボイスポジションを確定し、生徒に共鳴を身体面・肉体面で理解して貰ってもそれは理解のきっかけでしかありません。
結局は母音『A(ア)』で発声出来なければ、意味がありません。
もっと言えば他の母音でも発声出来なければなりません。
しかしながら、きっかけというのは重要です。
実際に共鳴が出来ている状態をまずは体で理解して貰う、というのはレッスン手段としては非常に有効です。
3:歌唱に行き詰ったらボイスポジション
歌唱指導をしている際に共鳴を失ってしまったら、ボイスポジションを探って基本的な共鳴能力を短時間で取り戻させることも可能です。
共鳴が出来ている時は力が抜けている時です。
腹式呼吸も比較的上手に作用している時です。
歌唱指導をしている時、生徒は自分の発声方法を見失いがちになります。
その場合は歌唱指導を一時中断し、基本的な発声方法をもう一度理解して貰って下さい。
ボイスポジションは、あらゆるレッスンの場面で役に立ちます。