兵庫県立御影高等学校 放送部からのインタビュー
- 発表(スピーチ)は、立ちと座りどちらの方が適しているか
- 立って読むときと座って読むときの声の違いについて
- 発声するときの喉・お腹の動きについて
- 声質と腹式呼吸・胸式呼吸の関係
- 立って発声するときと座って発声するときの体の動きの違いについて
- 立って読む時のコツは何か
- 座って読む時のコツは何か
- 立って読むとき、座って読む時のベストな姿勢について
といったことについて、インタビューを受け、ご質問に答えさせて頂きました。
発表(スピーチ)は、立ちと座りどちらの方が適しているか
発表(大勢の前で発表するスピーチ)は立って読むのと座ってよむのはどちらが適しているでしょうか?
まず、立つということ自体が人間というのはこう、バランスを取らないと立てないので、緊張したりすると全身に力み、力が入ってしまうことがあるんですよ。
ですので、そういう意味では立ってスピーチをしたり、ナレーションをしたりっていうことに関しては、人によってはかなり体が硬くなってしまってぎこちないしゃべり方になってしまいます。
これがナレーションではなくてスピーチということであればある種の「表現力」っていうのが大事になってきますよね。
そういう意味では、声優さんと同じ形で「演じる」ということに関してはやっぱり立ってやったほうがいいのかなというのはありますね。
では、アナウンスする場合は座ったほうが良いですか?
ええ、アナウンスというかナレーションの場合は基本的に座って行います。
座った方がリラックスできるからですか?
そうですね。よくあるケースとして例えば、テレビ番組のナレーションの収録風景をテレビなどで見たことあります?
いいえ・・
あの、レコーディングブースなどに座って・・・
えっ!?座って撮るんですかナレーションって?
はい、ナレーションは座って録るんですよ。で、声優さんの場合は立って録るんですよ。
はい、それは何度か見たことがあります。
ナレーションは原稿を読みながら座ってやるとか、まぁ、ラジオとかもそうなんですけど、ああいったものは座って行うのが普通ですね。
なるほど。
立って読むときと座って読むときの声の違いについて
立って読むときと座ってよむときの声の違いってありますか?
ありますね。大きく分けると、
立って読む場合というのは、身振り手振りを添えたりして、自分を表現していくと。つまり、役者まではいかないですけど、役者的な要素をいれるしゃべり方ですよね。相手を説得させていくというような・・・その場合は立ってやった方が説得力がでるんですよ。
なるほど、立った方が説得力が強くなる・・・
はい。そして、
座って読む場合というのは、説得力を促すというよりかは、どちらかというと、一方的に発信するものが多いので、ナレーションのように。だから安定したしゃべり方というのが求められます。なので座ってやる場合が多くなります。
用途によって適した方法が変わってくるということですね?
はい、そういうことです。
発声するときの喉・お腹の動きについて
では、次なんですけど発声するときの、体の中っていうのはどういう風に動いているんでしょうか?喉とかお腹とかです。
まず、喉・・・声帯はですね、声を出すことによって開いたり閉じたりっていうのを繰り返すんですね。
閉じた状態っていうのが、声帯が摩れあって声がでる仕組みになってるんですよ。
開いた状態のときはどういうことかっていうと、もう声を出していなくて呼吸・息が声帯を通過しているときのことです。
声を出すときは息を胸の方から口の方に押し上げて、なおかつ声帯を閉じることによって摩擦が生じて声になるというわけです。
つまり、声帯が開いてる時じゃなくて閉じてる時に声が出ているということですか?
はい、そういうことです。
そして、俗にいう喉が開いているかどうかという話は、それとはまったく関係のない話で、声帯のことではなく、ちゃんと喉の力みがとれていますか、とれていませんか?というような話になります。
喉と声帯はまた別の話ということですか?
そうです。なので声の構造上の話をすると、声帯のほうの話をしなくてはいけなくて、
ボイストレーニング的なところで考えてみて、喉の開きとか閉まりとかがどうなんですかっていうことになってくると、力が喉をちゃんと抜けているのか抜けていないのかという話になります。
喉は力が抜けてたほうがいいんですか?
ただスピーチとかナレーションっていうことに関していうと・・・歌の場合は抜けてなきゃいけないんですけど、「しゃべる」ということに関していうと必ずしも力が抜けてなければいけないかっていうとそうじゃないんですよ。
そうなんですか!?では、どういう時に力が抜けてたらよくて、どういったときに力が抜けてない方がいいんでしょうか?
たとえば、「キャラクター」ってありますよね、しゃべる人の。で、そのキャラクターを出すときに、喉開くことによってキャラクターがでなくなっちゃったらそれはそれで説得力がなくなっちゃうんです。キャラクターを失うことが一番よくないことなんですね。
キャラクターを出すのなら喉に力を入れるってことですか?
力を入れなきゃいけないということではないですが、決して力を抜くことに焦点を置き過ぎなくても構わないという話です。
じゃあ、抜かなくてもいいって感じですか?
基本的にはナレーションはちょっと力を抜いたほうがいいと思うんですけど、例えば声優さんやスピーチになってくると、マイクに対して声が通るかどうかのほうが重要な問題になってくるので、喉を開けばいいかっていうとそういうものでもないんですよね。
一概にそうではないんですね?
人によってケースによって違ってきます。
では、私たちは読むときはずっと先生から喉を開くようにって言われてるんですけど、それは力を抜けってことなんでしょうか?
「なるべく力を抜く」ということに悪い要素はないので、いいでしょう。
でも、キャラクターを壊してしまう・・ということに繋がるのであれば別に若干喉が閉まってる状態でも構わないと思います。
優先順位的には「マイクにしっかり声が乗っかってくれる」そういった状態を作ることの方がスピーチとかに関してははるかに上なんですね。
例えば、街頭演説してるような方だったりとかは、喉が閉まって声がガラガラ声になっちゃうんですけど、声はちゃんと通りますよね。マイクで。それと同じことですよ。
あぁ、なるほど。確かにそうですね、言われてみれば・・・多分喉的にはよろしくないしゃべり方ですよね、あれ。
そうですね。よろしくないですけど、でもしゃべってる内容に説得力を出したいんだったら、ああいうこともやらなきゃいけないよねってことなんですよ。
ちなみに発声するとき、お腹とかのほうはどういった動きになっているんでしょう?
お腹はですね、基本的にはしゃべるということに関しても歌う時の発声に関しても、横隔膜というものを作用させて発声するというのが基本です。
横隔膜というのは、あばら骨のちょっと下の方にある、お腹全体に広がっている膜のことです。
その横隔膜を下腹部の筋肉で押し込んで、反動で横隔膜を上に押し上げるわけです。そうすると肺が圧迫されて鋭い空気が声帯を通過して表にでていくから、それでパンチのある声というのがでるんですね。
ええと、単純に肺からだすのとどういった違いがあるんでしょうか??
呼吸には2通りあります。今言った腹式呼吸っていうものと、それから胸の式とかいて胸式呼吸というものがあります。
ほとんどの場合ナレーターさんとかさっき言ったスピーチを専門にしてる方は胸式呼吸でやってる方が多いですね。
そうなんですか!?腹式ではなく・・・
はい。腹式ではなくて胸式の傾向の人が多いですが、やはり長い目でみると喉を傷めないためにも腹式でやったほうがいいですよ。
放送部の大会で朗読とアナウンスがあるんですが、胸式と腹式だったらやっぱり腹式でしょうか?読むとしたら・・・
ううーん、こればっかりは実際にやる人の声質とか体の状態を見てみないと正直なところ、分かりかねるところもあるんですけど、基本的にはまず腹式でやるべきなんですよ。
ただ、さっきの喉の話と同じようにそれでマイクに乗るのが悪くなってしまったりとか、説得力が落ちてしまう。
説得力が落ちてしまうというのは、要するに「無理してやってるような感じ」が出て、しゃべっている内容が嘘っぽくなってしまうとか、そういうこともよくある話なんですよ。
そうなってしまうくらいなら、あまり胸式だ腹式だということに捕われすぎず、100%腹式じゃなく胸式がだいぶ混じっても構わないからバランスよくやるというのが一番いいと思いますよ。
一番はやっぱり説得力ですね?
そうです。実践的にやるなら「説得力」というところを全面に出していかないとだめですね。
練習だったら腹式で練習すればいいんですけど、それは練習の段階の話であって、実践でやるってことになったら「説得力をだすんだ」ということに集中してたほうがいいですね。
なるほど。腹式胸式よりも説得力を優先して。
そうです!そして、普段の自分らしい声で。
声質と腹式呼吸・胸式呼吸の関係
さきほど、「その人の状態とか声質を見ないと」というお話でしたが、その声質・状態というのは、どういう風に胸式・腹式に関係してくるんですか?
それは結構難しい話になりますが、その人によって声質のクセというのもあると思うんですよ。
例えば、息の量が声を発声するのに対してものすごく多いタイプの人とか、ボソボソといってしまうタイプの人とか・・・
あぁ、ウィスパーな人。
そういう人は、胸式の傾向が滅茶苦茶強いんですよ。
息がいっぱいだからですか?
そうですね。
息がいっぱい出ている場合というのは、胸式の傾向があまりにも強すぎるので腹式のやり方を中心的に教えた方がいいんですが、息の量が少なくて比較的声がはっきりしてる人の場合はそもそも腹式で発声できているというケースもあるんですよ。
そもそも腹式で、最初から?
ある程度は・・ですが。そういう方の場合はナレーション等をする場合はあえてやわらかい声を出す場合もあるので、もう少し胸式にした方がいいんじゃないかって判断を下すときもあります。
人によってって感じですね?
そうなんですよ。あとは、身長が高いとか低いということでも声っていうか体の使い方って微妙に変わってきます。
例えば身長が高い人の場合、おへそから口元までのこの距離っていうのが身長が低い人よりもありますよね。だから、腹式をやろうとお腹をへこませても息が上っていくスピードが遅いわけですよ。
でも身長がだいたい160cmぐらいの人だったとしたらそのスピードがもっと速いわけですよ。だから遅い方はアプローチの仕方も全く変わってくるんですよ。
高い人だったりするとどういった教え方になるのでしょうか?
高い人の場合は・・・これは一般的な統計をとった場合ですけどね、結構腹式うまくできない人が多いんですよ。
あ、距離があるから・・
そうなんですよ。
だから、身長が高い人っていうのは胸式が混じってしまうのは間違いないんですよ、はっきり言って。だからそれをどこまで腹式に近づけるかっていうことを練習していきます。
逆に身長が低い人だったら胸式を混ぜるっていう感じになるんですか・・・?
いえ、腹式が強いことに問題があるわけではないです。胸式は混ぜようと思えばいくらでも混ぜられるので、練習という段階なら腹式の練習をすればいいと思います。
立って読む場合・座って読む場合に、腹式と胸式どっちが向いているというのはありますか?
ありますね。
例えば先ほどの、座ってやった方がいいですよっていうナレーターさんの例です。ナレーションや朗読の場合は基本的には座ってやるんですよ。座って読むと横隔膜が作用しやすいんで全身の余分な力が抜けてくるんですよ、座ることによって。
なので、その場合は座ってやった方がいいってことなんですね。これはもうプロの現場でも同じですね。
声優さんや役者さん、街頭演説される方、セミナーをやられてる方・・・そういう人の前で演じるタイプの人というのは、いわゆる立ってやるのがまぁインパクトとしてはいいだろうなという話ですね。
立った方がインパクトが強く。
インパクトも強いし何よりも伝えるということが大前提になってくるので、そこに腹式で完全にやってくださいとかっていうのは、正しい形ですけどそこに集中しすぎるのはちょっと危険かなと。
あぁ、やっぱり伝えることが重要だからですね。
練習するときは腹式です。これは当たり前ですよ。ナレーションでもスピーチをするかたでもみんな腹式の練習をすればいいんですけど、実践では優先順位が変わってきますということです。
なるほど。練習と実践はまた別として。
はい。別です。
立って発声するときと座って発声するときの体の動きの違いについて
立って発声するときと座って発声するときの体の動きの違いってありますか?
立ってやってるときと座ってやってる時の体の違いは、強いて言うならば、座ってやってる時の方が立ってやってる時よりも体全身が力まない。
あ、そうですね、最初に緊張状態になるどどうしても力みがちになるって・・・
そうです、人間って立ってるだけでもバランスを取らなきゃいけなくて、そのために筋力を結構使うので、それだけもちょっと力んでる状態とはいえるんですよ。
それに輪をかけてその緊張とかがあると体がガチガチな状態になっちゃう人が多いですよ。
では、立って読むほうに向く人っていうのはどういう人になるのでしょうか?
その場合向き不向きの問題ではなく慣れの問題だと思いますけどね。
慣れですか?
ええ。
普段から腹式の練習もいっぱいやってます、喉の開きもいっぱいやってます、声の響かせ方もしっかりできましたよっていうことをずっと続けてやってきたりだとか場数を踏んで何度も何度もやっていくことでの慣れで、力みっていうのは徐々に徐々に減らしていくことができるんですよ。
では、立って読むのは上級者向けという感じですか?
この辺はその人の器用さによりますよね。
上級者向けでは別にないです。
例えば、これが歌だったりっていう話になってくるとバラードみたいなゆったりした曲だったら座ってやった方がうまく歌えるとか、あとアップテンポは立って歌った方がグルーヴ感はでるから立った方がいいとかっていうのは明確に言えるんですけど、でも「しゃべる」ということに関していうと、やっぱりこれは場数が問題になってくと言えますね。
じゃあ結論としていうと向き不向きではなく場数・・・?
そうです。場数と練習量。
ちなみに、読みに対する初心者、ほんとに初心者で腹式呼吸とかあまりできない人だったら座りのほうがいいですか?その人が朗読をするとしたらなんですけど・・・。
全くその知識がない状態だったら、正直いって立ってやっても座ってやっても対して変わらないと思いますけどね。
ある程度知識を得た状態であれば立ってやったほうがいいのか座ってやったほうがいいのか、初期段階で結論付けてやっていくことも可能かと思うんです。
一番初めの状態というのはそういうことも知らないっていうことであれば、立ってアプローチしても座ってアプローチしてもいい方を選んだらいいんじゃないかって話になってしまいますね。
個人の好き好きって感じになってきちゃいますかね?
はい。何も練習してないんだったらそうなってしまいますね。
緊張しやすい人だったら座りになったりしますか?
そのような教え方はしませんけど、座った方が落ち着くってことであれば座った方がいいんじゃないかってとこはあります。
そういうレベルの話ですね。
立って落ち着く人もいれば座って落ち着くひともいますもんね。
そうです。
では、ちなみに日本人だから立って読むほうがいい、座ってよむ方がいいっていうのはありますか?日本人の体的に・・・とか。
それは万国そんなに変わらないですね。
放送部の大会ではアナウンスや朗読を読むときに、結構上位層に座って読む人が多いんですけど、というかそもそも全体的に座って読む人が多いんですけどこれってなぜだと思われますか?
座るのは朗読の基本ですからね。
ナレーションですとか、朗読はナレーションですよね。
ナレーションとかっていうのは座りが基本なんで、座ってやる人が多いのは当然ですね。
だから上位層も座って読む人が・・・・。
そうですね。
落ち着いて読みたいというような方向性で多分やりたいんだと思うんですよ。
ただ、スピーチということに関しては座って読むことに説得力が出るのかっていうと必ずしもそうではないんですよ。どうやって伝えたら良いのかってことが先行しますから。
例えば、言葉の使い方だけじゃなくて表情の作りかただったり、多少の身振り手振りを混ぜてみたりとか、とにかく説得力がものをいいますので、そこは大きく分けた方がいいと思います。
ちょっと横道にそれてしまうのですが、アナウンスってスピーチとナレーションだったらどっちに分類されるのでしょうか?
アナウンスはスピーチとナレーションどっちに分類されるのかですよね。これはナレーションですね。アナウンスの場合は。
ナレーションなんですか?
ナレーションですけど、アナウンスというのは、確かに相手に伝えるって意味合いの言葉なんです。
だけど、淡々と伝えるっていう要素が入っているので。
そこに感情をいれてはいけないのがアナウンスなんですよ。
だから、ナレーションというものの方に分類されてくる。
なるほど。
ではアナウンサーさんってけっこうニュース番組とか見てると立って読んでる方もいらっしゃるのですが・・・。
アナウンスもやっぱり基本は座りになるのでしょうか。
座りの方がいいです、本来は。
ただテレビだと、仕事上座って天気を伝えるわけにもいかないですし、パネルを座って回転させるわけにもいかないし。
それはもう、演出上の問題が関わってきますね。
では朗読もアナウンスもやっぱり基本は座りですかね?
朗読、アナウンスは基本座りですね。
立って読むときのコツ
アナウンス、朗読で立って読むときのコツについてお教えいただきますか?
アナウンス、朗読で立って読むときのコツ・・・。
余計な身振り手振りや表情を変えるとか、そういうのはあんまりなくした方がいいですね。
淡々とっていうのが一番いいと思います。
朗読では結構表情豊かにと言われてるのですがそれは・・・?
表情豊かっていうか表現力の話ですよね。
表情とかそういう外で見えるような要因のものは省いて、文章を読み上げるってとこでの表現力っていうところで、表現力をだしていくってことですね。
では別にそんなにこやかな場面でにこってしながら読まなくても・・・。
はい、それは必要ないと思います。
他に気を付けたらいいところとか、これはしちゃいけないということはありますか?
よくありがちなのは、人前でナレーションをしたりするとやっぱり緊張してしまいます。
それで声のトーンが下がっちゃう人が結構多いんですよ。ですけど、本来自分が一番マイクに乗りやすい声のトーンというものがあって、それはその人それぞれだからどの帯域なのかとか言えないですけど、それをですね日々の練習ではっきり見つけて、本番でも同じようにそのトーンでできるのかどうかだと思いますね。
自分のトーンをみつけて本番でもそのトーンで。
そして、その一番いいトーンとは何かというと、それは普段練習しているときに自分の声を録音してみればいいんですよ。
いつも録音してると思うんですけど、でも録音したときに一番マイクに自分の声が通る、通る話っていうときの朗読してるときのトーンっていうのはどの辺のものなのかある程度決めておいて、それを実際人前でやるときもできるかどうかっていうのが一つのコツだと思いますけどね。
自分なりの伝えやすいトーンの発見ですかね。伝えやすいというか通りやすい声の。
それが本番でもそのままできるかどうかっていうところ。これが結構できない人多いんですよ。
そうですね、結構緊張しちゃうと私もトーン下がりがちになっちゃいますので。
ちょっと暗くなってしまいますからね。
暗いナレーションをするなら暗くてもいいんですけど。
そうじゃない時もあるわけで、それは普段、自分の良さっていうのを十分に発揮できるような場数をしっかり踏むことでしょうね。
やっぱり場数ですか。
それは大事ですよ。
ちなみに、放送部の顧問は立って読んだ方が声が出やすいっていう風に言うんですけど、それって実際どうなのでしょう?
先生のご意見もあるのであまり違うとは言いたくないんですけど、でも「立ってやるから声が出やすい」ということはないですね。
立ってやったほうが確かに、「全身を使っている」という面では、なんて言ったらいいんでしょうか、気合いが入るとまでは言わないですが、まぁ技術的なことはさておき、という話なんじゃないでしょうか。
意気込みの問題だと思うんですよね、この場合。
じゃあ、声が出るような気がする!みたいな感じですか?
そうですね。
例えば、小学校の時にみんなで合唱やった時みたいにわけもなく立って歌いましょうっていうようなことと同じことなんで、それは。
論理学的・発声学上は立ってやったほうがいい場合と座ってやったほうがいい場合っていうのは色々分かれてくるので。必ずしも立ってやらなきゃいけないということはありません。
では別に声の出やすさとかはあまり関係ないですかね。
立って読むことも座って読むことも。
「読むということ」に関係してくると、その用途によって変えたほうがいいと思います。
先ほど言ったように立って読むときは説得力を持たせたい時で、座って読むときは淡々と伝えるって感じですね。
座って読むときのコツ
座って読むときのコツもぜひ教えてもらいたいです。
座って読むときのコツですね。
まず座ってる時点で下半身が固定されて力みがそこまで入らない状態ではあるので、机もあれば上半身もひじをついて固定しちゃえばいいんですよ。
ひじをついて固定・・・?
下半身はイスに座っているわけでしょう?で、上半身は机があれば両肘をついて、それで原稿があるんだったらそれで原稿を読む・・・という形にした方が力みは最大限取れますので、朗読やナレーションはしやすくなると思います。
座ってよむときは体を固定して力みをとるって感じですかね?
そうですね。さらに、マイクに乗りやすい声で話すっていう感じですかね。
普段から腹式を意識して、本番では腹式とかあんまり考えないようにして「マイクに乗りやすい」ということを重点的に考えた方がいいですよね。
そこでちょっとニュアンス的に息っぽい感じをもうちょっと混ぜたいなってことだったら少し胸式でウィスパーを足していくとになってくると思います。
基本的には堅い声をまずは出せるようにして、そこに息を足していく感じですね。匙加減の調整ってのはそうやっていきます。
そこからちょうどいい声を模索していくって感じですね?
そうです。
なんか深いというか・・・。
では結論としていうと、練習の時には腹式呼吸を意識して聞こえやすい声のトーンを模索して、本番ではただ伝えることを意識するという感じですか?
はい。
用途によってですね。
スピーチの場合は伝えるが大前提。
朗読やナレーションの場合っていうのは伝えることも大事なんですけど、それ以上に声の質感を熟知していく。
それから力を抜く。
これが一番重要になってきますよね。
要するに落ち着いた状態にすると。質感というのは先ほど言われた、ウィスパーを足したりってことですか?
そうですね。とにかく落ち着いて、あっぷあっぷな感じにならないことをですね、ナレーションの場合は。とにかく落ち着いてゆっくりと。
立って読むとき、座って読む時のベストな姿勢について
追加質問なんですけど、立って読むときって姿勢をまっすぐにした方がいいとよく言われますが、立ちと座りでベストな姿勢はありますか?
ナレーションするときは立つ姿勢はすらっとしっかり立ってください。発声における模範的な立ち方で。
肩幅ぐらいに足を開いてって立ち方ですかね?
そうです。そして、体はあんまり動かさず、ナレーションを淡々と行っていくと。
とにかく立ってやってるナレーションも座ってやってるナレーションも、キーワードは落ち着いてやるてことです。
それは立ってやることになったとしても、やっぱり落ち着いた姿勢でやらなきゃいけないんですね。
はい、力の抜けた状態で。
でも政治家さんみたいなスピーチをする人っていうのは立ってやるんだけど別に落ち着く必要はないんですよ。
それよりかは伝えることを重要とするんです。だから根本的にやり方、アプローチの仕方が違うんですよね。
今回のように朗読とアナウンスだったら、両方とも落ち着いての方になるので、座ってやっても立ってやってもいいんですけど、落ち着いた状態でなるべく力を抜いて自分の一番声の安定したところを模索して本番でも普段の練習のトーンを崩さないでできるかどうかっていうのが大きなポイントになってくるとおもいますね。
とりあえず自分の落ち着くペースでって感じですかね?
そうですね。
じゃあ座ってるときは手を置いて固定してって感じでしたよね?
じゃあ座ってるときは手を置いて固定してって感じでしたよね?
そうですね。
背筋はピーンですかね?
立ち姿勢の場合は足を肩幅に開いて全身の力を抜いて、手は両腕は横にダランと垂らして頭のてっぺんのつむじのあたりを天井にむかって引っ張りあげられているような状態で立ってしゃべるのが一番いいんですよ。それが基本的な姿勢ですね。ちょっと顎をひいたか顎をあげるかっていうのはその人の骨格で変わってくるんですけど。
どういった骨格でしょうか?
首がちょっと斜めに前についてる人っているんですよ。
斜めに前についている?
はい、斜めに前に出ている人とそれから首がちゃんと90度でまっすぐついてる人とで2通りあるんですよ。
そして、まっすぐくっついてる人のタイプっていうのは顎をちょっと、むしろあげた方がいいんですよ。
上げるんですか・・・?
はい。その方が声が通るんですよ。座ってるときは別にそうしなくてもいいんですけどね。
座ってる時はそんなに顎は気にせず?
気にしなくていいと思います。
座ってる時にちょっと前かがみになるだけで、あの角度ってだいぶ変わってくると思うので、顎というよりは座ってる姿勢だと思います。
座ってる時は背筋はちょっと前かがみになる感じですか?
いや、そうとも言えないですよ。
例えばさっき言った、その首が直角についている人の場合っていうのはその人に関してはちょっと前かがみの方がいいっていうケースもあるんですけど、首がそもそも前の方にちょっとくっついてる人のタイプっていうのは、座っているときは正しい姿勢でピンッと張って座っていないとただでさえ首が前のほうに出てるので、今度は少し引かないといけません。
角度の問題なんですよ。この角度を間違えると、舌が喉の中を圧迫してしまいます。圧迫すると声が前に飛ばなくなるので、その舌の状態を加減していくのが大事なんですね。その角度によって。
はい、そうですね、舌が邪魔になることもあるわけですね。
ただそれは、その首の角度によってある程度変えられる部分もあります。
つまり立つにせよ座るにせよ綺麗な姿勢で、でも顎に関してはその人の骨格によって変えるといった感じですか?
そうですね。
他校の顧問の先生とかにも聞いたことがあるんですが、だいたいの方が立った方が声がでると仰ってたので、新しい発見といいますか・・・。本当にありがたいです。
最後にもう一つポイントをいうとしたら、発声というのは、歌の発声とか練習の発声とかアナウンスの発声とかってとこも全部含めてなんですけど、全部理屈で成立しているものなので。
だから理屈が通ってないとだめなんですよ。だからもし顧問の先生が立ってくださいって話をされていたんだとしたら、なんで立ってやらないといけないんですか?ってとこなんですよ。
理屈が説明できた時に初めて練習できるわけであって。
練習のカリキュラムを組み立てていけるわけですから、座ってやる理屈立ってやる理屈がちゃんと存在するわけですよね。
だからその辺を踏まえたうえでなぜ立ってやらなければいけないのか座ってやらなければいけないのかっていうのを考えつつやっていくのが今後のポイントになっていくんじゃないかと思います。
なるほど。
ポイントは理屈ですよ。
最後に気になってしまったのでお聞きしたいのですが、発声練習をするとき、それこそまた顧問に立ってやったほうがいいと言われているのですけど、それは立ちと座りどっちのほうがいいんでしょうか?
どんな発声練習ですか?
ロングトーンと「あいうえおいうえおあうえおあいえおあいうおあいうえ」の滑舌練習という感じの発声練習です。
ウォーミングアップということであれば、立ってやることをお勧めしようと思います。その場にいたら。
それはいったいどういう理由ですか?
座ってそれやってたら体が発声することに対してあったまってこないというか、要するにストレッチみたいなものですからね。
それは座ってやってたらできないことだから、その場合は立ってほうがいいんでしょう。
ただ実践的にやるとなれば分けた方がいいんでしょうね。立ちと座りで。
なるほど、本日は本当にありがとうございました!